若きウタリに

バチェラー八重子

エスペラント翻訳:星田淳・他


1 モシリコロ カムイパセトノ コオリパカン
ウタラパピリカ プリネグスネナ
*アイヌ語の発音をそのままカナで表現して短歌にしたもの。
この中の カムイ=神 を「天皇陛下」とする金田一京助の
註と全訳がついている。その訳文は:
大八州(おほやしま)国知ろしめす神のみことのたふとしや、
神のみいづのいや高にさかえますべし
Ho, adorata / estu imperiestro / de Japanio/
prosperu majesteco / lia, longe, potence! /

*これに対してアイヌ語本来の意味通りに理解すればどうか、を示す
別の訳文が 補注(111頁)に出ている。
大地の神、尊い神に われら尊ぶ 人々の長よ 善良でありましょうよ!
Sinjoro Moŝto / landhava, estimata / de ni, popolo, /
ni estu reciproke / bonvenaj kaj afablaj! /

2. ウタシパノ 仲良く暮さん モヨヤッカ
ネイタパクノ アウタリオピッタ
注:ウタシパノ=相互に。 モヨ=鮮少、稀。 ヤッカ=なれど。
ネイタパクノ=どこまでも。 アウタリ=わが同族、同胞。
オピッタ=皆々。
「今は残り少なになりはしたけど、相互に仲よく暮らしていこうでは
ないか、我が同胞の皆々」
Ni samgentanoj, kvankam restas ne multaj, vivu en ordo,
amike en harmoni' feliĉo kaj konkordo!

3 ウタシパノ ウコイキプウタリ レンカプアニ
アイヌピリカノ モシリアエケシケ
* Utao en la aina lingvo esprimita per japanaj kana-literoj.
Tradukite en la japana:
互に爭ふ人達の為に、善良なる人々が国土の上に跡を絶つか!
Ĉu bonanimaj / homoj pereos el sur / la landa tero, /
pro interbatalantoj, / malbonuloj ĉirkaŭaj? /

4 セタコラチ(犬のごとく) イテキウコイキ(争ふなかれ)
イコレヤン(下さい、争はないでください)
ピリカ(善良)ウカツオマレ(互いに親しみて、愛睦び合ひて)
ウエニシテヤン(互いに堅固におなりなさい)
Ho, ne malpacu/kiel hundoj, bonvole./
Estu amikoj, /reciproke inter si/firmigante la ligon.

5 ウタシパノ(相互に) ウコヤイタカヌ(互いに) ピリカプリ(善良なる風・醇風美俗)
わするなウタリ 永久(とこしへ)までも

5 ウタシパノ ウコヤイカタヌ ピリカプリ
  相互に  互いに尊敬しあう よい風習(醇風美俗)
 忘るなウタリ とこしへまでも
Nin reciproke
estimi, estis nia
bona tradici'.
Ne forgesu, ho fratoj,
Tenu en kor' eterne!

6 若人よ サポを助けて はげまれよ ミチのオカケタ ハポのオカケタ
Junuloj karaj, laboru diligente helpante franjon,
sekvante vian paĉjon, sekvante vian panjon.
(アイヌ語註)サポ=姉、ミチ=父、ハポ=母、オカケタ=跡に(後に)

7 父の家 嗣(つ)ぎてつたへよ 孫曾孫(まごひこ)に
亡びの子では 無いといふこと

8 お互いに 憎みそねみて 滅ぼせし ウタリの国土(モシリ) 誰が手にある

9 の2行目
「今はむなしく 人の手に泣く」
は 何を表現しているのか?

9 お互に にくみそねみて 何ならむ
今はむなしく 人の手に泣く
Kiel utilas / la internaj kvereloj / de nia gento? /
Ni povas nun nur plori / pro la lando perdita! /

*この歌については 以前「問題点」として出しましたが ほかの意見が
でないので 私の理解で 訳しました。
この歌は この前にある次の歌
8 お互いに 憎みそねみて 滅ぼせし ウタリの国土(モシリ) 誰が手にある
と対応している。つまり 8 の「誰が手にある」への答え の感じ。
ウタリ(アイヌ)は統一国家を作ったことはなく、結局明治維新=「北海道」
設置(日本領土に編入)によって 「ウタリの国土(モシリ)」 は滅ぼされた。
それまでも和人(幕府、松前藩、商人など)の圧迫に対して何度か反乱も
起こしたが 和人側は アイヌ内部の対立(お互いの にくみそねみ)を
うまく利用して鎮圧してきた。
8 の歌はそれを表現している。「誰が手に」の答えは
9 の「人の手に」 つまり「他人の手」(=和人の国家;日本国)と感じられ、
「人の手に」わたってしまった ウタリの国土(モシリ)を悲しむ気持ちが
感じられます。

10. カントオッタ アイヌカラカンチ ありといふ
うちなほしてよ 病めるウタリを
(注)カントオッタ=天上に・神の国に。 アイヌカラカンチ=人間を作る鍛冶神。
ウタリ=同族・同胞・人々。
En la ĉielo forĝas homon laŭdire. Do rehardu nin,
frataron en sufero, malsano kaj mizero!

11 アウタリヒ(わが同族よ) モシリイコンヌプ(国の一等恐ろしきもの、国を亡す まがものは)
トノト(酒)なり イカエチクーな(ゆめ飲むな) エチイホシキな(ゆめ酔ふな)
Fratoj, memoru!/Sakeo pereigas/nian frataron./
Neniam trinku, fratoj,/neniam drinku, fratoj!/
原文では「国を亡す」と なっていますが 実は国土(自然環境)ではなく
同族としての人間のまとまりが酒で壊されることが問題でした。

12 ふみにじられ ふみひしがれし ウタリの名 誰しかこれを 取り返すべき

13 野の牡鹿 牝鹿子鹿の はてまでも おのが野原を 追はれしぞ憂き

14 せまき野も ありなば飼はむ 親子鹿
赤き柵など 廻らしてしも

15 野より野に 草食み(はみ)遊びし 鹿の群 今はあとだに なきが寂しさ

16 国も名も 家畑までも うしなふも 失はざらむ 心ばかりは

17. 古(いにしへ)の ラメトクたちの 片腕も
ありてほしかり 若きウタリに
(注)ラメトク=勇者、アイヌの謡ひ物の中に出て来るやうな勇者の意。

18 夏ながら 心はさむく ふるふなり ウタリが事を 思ひ居たれば

19 いにしへの ユーカラカムイ 育てにし 姫君今も 在(あ)らまほしけれ

20. 愛(めで)らるる 子より憎まるる 子は育つ
などてウタリの 子は育たぬぞ

21 ウタリ思ひ 泣き明(あか)したる この朝の
やつれし面(おも)わ はづかしきかな

22 たつ瀬なく もだえ亡ぶる 道の外(ほか)に
  ウタリ起(おこ)さむ 正道(まさみち)なきか

23 灰色の 空を見つむる 瞳より
とどめがたなき 涙あふるる

24 寄りつかむ 島はいづこぞ 海原に 漂ふ舟に 似たり我等は

25 島々は 群れ居るなれど 他人(ひと)の島
  貧しきウタリ 寄るすべもなし

26 貧しくも コタン愛して 働らかむ 父母たすけ 兄を助けて

27 貧しくも 心富まして ながらへむ
おやの残せる この地の上に

28 ウタリ方 砂の数ほど おほからば 波は越させじ ウタリの丘に
Se ni, gentanoj estus multaj sufiĉe kiel sableroj,
ni ne lasus transiri ondojn sur monteton nian!
最後の部分、字余り(8音)になりました。見直す余地は?

29 寄る波に 寄せらるる砂 寄り寄りて
造れり砂丘の 丘辺(をかべ)を高く

30 我良くば 何かは我に よからざる
猛(たけ)き獣も 我を傷(いた)めず

31 心高く もちてあらばや むらがりし
雲は過ぎ去り 胸明く(むねあかく)ならむ

32 波を見て 大いなりとすな 海を思い 大きく持たれ ウタリ心を

33 波を見て 恐ろしとすな うき世には 尚おそろしき 波ぞ高鳴る

34 荒ぶ(あらぶ)波 つききりて漕げ 岸辺まで
ゆめゆるぶなよ ウタリの腕を

35 我がウタリ 岸辺はすでに 近かるぞ 祈りて櫂に 力そそげよ

36 寄木(よりぎ)さへ 日の光にて きよめられ
清木(きよぎ)となりて 人の用にたつ

37 おこなひも 心も清く 致しませう 達者で長く 生きむがために

38 出来る程 宝も名をも 残しませう
後の子のため 孫曾孫(まごひこ)のため

39 考へて また考へて 見て見ませう ウタリの為を ウタリの前途を

40 世の中に 学問ばかりが 身を立てず
わが身に積めよ よき業(わざ)を積め

41 何よりも 止めたき事は 酒飲みぞ
酒に流せる 土地の多き世

42 止(や)めたきは 疾(やま)し心(ごころ)と うそつきぞ
互(たがひ)の力 挫かぬ為に

43 笑はれて 唯泣いている それよりも 己が為すこと 考へませう

44 悲しいと おもはず成せよ 思ふ事
力の限(かぎり) 成せばなるもの

45 現し(うつし)世に 蝶よ花よと 愛でられる 姫にも悩み あると知れかし

46 あかねさす 畑(はた)に鍬(くは)持つ 人見れば
ほんに頼もし 彼等が行く末

47 言葉より 行ふ人と なれかしと
祈りて止まぬ 母の胸かな

48 笑はれて 腹を立てまい あの声は 我に教へる 自然の声ぞ

49 何事も うはのそらにて 聞く人の
醜き魂の 憎くかなしき

50 なまけずに 成せよ自分の 好きずきを
  成しとぐるまで 他見(よそみ)はせずに

51 魂を 打ち込みたなせ 何事も
よしや小さき 事にてあるも

52 適度なる 野心家であれ ウタリの子等 欲の無い者 間抜けて見ゆる

53 酒のみて 空(から)いばりして をるうちに
  空になりたり ウタリの財布

54 土間に置き 粗食で飼ひし 犬を見よ
主人大事と 守り居るなり

55 若人(わかうど)よ 心の眼(まなこ) さまし見よ
何処見てあるぞ 己を見ずに

56 改めむ ずぼら不規律 不勉強
今の今より 必ずきっと

57 今よりも 大事にしませう 己が身を
また己が名を 大事にしませう

58. 死人さへ 名は生きて在る ウタリの子に
誰がつけし名ぞ 亡(ほろび)の子とは

59 今までの やうな呑気で なりませぬ
生ける勉強 しませう我ら

60 心(しん)あらば 必ず燃えむ ウタリの子等 明るくしませう 我らの前途を

*:utari =ウタリ=同族(アイヌ語)

61 笑はれて 腹が立つなら なほしませ
あなたの姿 案山子(かかし)そのまま

*"birdotimigilo" が笑われる対象になる、と理解されるか?

62 聞きわけむ 心は神の たまものぞ
さとりを開け 朝過ぎぬ間に

63 道の邊の 千草を思へ ふまれても なほ笑まひつつ 花咲きてあり

64 黒けれど 侮りますな あの烏 自由に高く 飛びめぐるなり

65 曙の 娘となりて ウタリをば 明るくしませう 永久までに

66 現(うつ)し世は ウタリの朝と 思へかし
顔を洗ひて しかと帯して

67 太陽を 愛したたへし ウタリなり 心に受けよ 愛の光を

68 太陽を 隠すあの雲 憎らしや
去(い)なせて下さい 風姫御様(かぜひめごさま)

69 太陽の 光に照らせ 各自(おのおの)の 暗い心は 明るくならむ

70 太陽神(チュプカムイ) み空にいます 明々(あかあか)と
白衣(びゃくえ)まとうて ウタリの上に

*太陽神チュプカムイは天の最高神の おとむすめ ?

71 偉人をば 太陽に準らへ(なぞらえ) ほめたたへし
  いにしへ(古)のウタリ 歌人(うたびと)ならずや

72 盲人(めしひ)にて さまよひをれる 我等をば
癒いや)しくだされ 天つ国見む

73 神を信じ 偽(いつはり)をやめ 何事も
成さば必ず み恵あらむ

74 ほんとうに 悲しみ泣ける 人ならで キリスト様の 御事業(みわざ)は知らじ

以前出した(原歌74)は、はじめの部分を現代文(口語)的に理解したもので
間違っていました。短歌は文語文です。上のように訂正してます。

75 目に見えぬ 人の心の 集(つど)ふところ
其処(そこ)に神まし キリストいます

76 キリストの 教えの髄の その髄を
  ウタリに告ぐる 人は誰なる

77 我らがため 赤き血潮を 流されし
キリスト様の 慈愛身にしむ

78 空にのみ 星ありとすな 人の世の 星を数へむ 良き子集めて

79 目をつむり 心の目にて 仰ぎ見よ
日の御力(みちから)の いかに清けき

80 草も木も 嵐の中に いきてあるを など人の世の 嵐おそれむ

81 真心の こもる言の葉 しみじみと
心にひびき 吾(われ)は泣かるる

82 胸さくる 思(おもひ)をこめし 一声の
身にしみとほる ほととぎすかな

83 血を吐かむ 思(おもひ)に啼きし ほととぎす
  朝(あした)に笑(え)まふ 声を聞かばや

84 知ることは 知らぬ事より 少なけど 一つ知るとも よき事知らむ

85 寒き朝も かかさず勤むる 子鴉(こがらす)に
暖(あたたか)きお菓子 あらば輿(あた)へむ

86 日は暮れて 心も暗く なりぬれど
朝(あした)おもへば 我が胸あかるし

87 雄鳥は 高々なきて 夜明けよぶ ウタリ男子等 なけよ世の為
Krias laŭte por voki tagiĝon koko.
Nu, kriu fratoj de nia gent' aina
por veki la mondon.

最後の行、字足らずです。(眠っている世の人を)覚まそう、の意味に解釈してあります。
por venki apation. とすれば字数(母音=音節数)は7になり解決しますが、意味は「(世の)無関心、冷淡さに 打ち勝つために」になります。

88 古(いにしへ)の ヌプルクイトプ 知らせけり ポイヤウンペの 行くべき道を

(註)ヌプル=尊き、霊ある。クイトプ=雁。
ポイヤウンペ=詞曲(ユーカラ)のなかの少年英雄の名、
ユーカラカムイのこと。

89 聞かまほし 永久(とこしへ)に長く 生くる道を
  ヌプルクイトプ カムイチカッポに
*ヌプルクイトプ:尊き(霊ある)雁
*カムイチカッポ:神鳥


90 杉のごと 高き人がら のぞましき
ずるき人こそ 低き人なれ

91 石のごと 無言のなかに 力あれ ふまるるほどに 放て光を

92 石を割る 木さえある世ぞ ウタリの子等 割りて進まむ この憂世をば

93 くるしさに 壁に頭(かしら)を うちつけて
果てなんかなと 幾度(いくたび)思ひし

94 よろづの事 運命(さだめ)なりとは 思へども
あきらめ得ずに もだゆる我は

95 教育の なきサポなれば 身を恥じて
人目を忍ぶ 思ひこそすれ
*サポ、姉 とは若き人に対して 著者自身。

96 トレシ方 ちからのかぎり 学べかし 世に出て恥ぢぬ 道しるべの為
(トレシ:妹、女性への呼びかけ)

97 なやむとも せんなき事を 今も亦(また)
繰り返しつつ 思ひ乱るる

98 どん底に つき落とされし 人々の 登らむ梯子(はしご) ありなばと思ふ

なにか 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を連想しますね。

99 苦しみの 日々を過ごせる この我に あかるき事の あれかしと思ふ

100 ずたずたに 蹂みにじられし ウタリの名 取り返すのも 己が胸にあり

101 よくもまあ 心狂はで 在(あ)りしものと
今さら吾を いぶかしむかな

102 たつせ無く 悩み悩みて 死する外に
   われらウタリの 道はなきかや

103 ウタリの子 一人行方をくらませり 烏麦しも 生えし様なる

104 この世にて よし身は亡び 朽つるとも 心はとはに あらましと思ふ

105 隙間もる 風も寒かる 山里の
貧しきウタリ 思はるるかな

106 この家の 障子は名のみ 紙をはる ところさへなく こはれ果てたる

107 過ぐる日は のどけくありし トットモシリ
今は憂(うれひ)に とざされにけり

註(アイヌ語):トット=母、モシリ=国。
トットモシリ は母の国、即ち 郷国。

108 血を吐かむ 思の我を かへりみて
心の底に 哭くばかりなる

109 紅葉おち 秋風さむく 身にしめど また来む春を 思ひつつあり

110 ああ痛む 此の苦しみの 我が胸を
啄(ついば)み去れよ こころある鳥

111 我が心 沈み沈みて 地獄まで
落ちし思の するぞ悲しき

112 しんしんと 更け行く夜半(よは)に 我一人(われひとり)
ウタリを思ひ 泣きておりけり

113 かなひなば この苦しみを 告げまほし
閑古鳥(カッコクどり)の なくがごとくに

114 新聞の アイヌの記事を 見るごとに 切に苦しき 我が思ひかな

115 汝(な)が言葉 真実(まこと)にてあれ よしやよし
世界の言(こと)が 皆うそにても

116 何故(なにゆゑ)ぞ おほくの人と 住みながら なほも寂しく 我は在るかな

117 亡びゆき 一人となるも ウタリ子よ こころ落とさで 生きて戦へ

118 暗(やみ)の夜に ひとり啼(な)く鳥 歌よみて
知りて我が好く ほととぎすかな

119 くろ金も 焼きつくさなん 熱なくば ウタリの子等の 名は救はれず

120 星の如(ごと) さやけき瞳 持ちしウタリ
   くもりがちなり 今日此頃は

121 如何ばかり 落ちぶるるとも 落すまじ
持ちてうまれし 良き心をば

122 浪風(なみかぜ)の あらずばよしと 思へども
   荒浪しのぎ 漕ぐ力ほし

123 漕げよ漕げ うき世の浪の 荒くとも
腕(かひな)たゆまず 男の子等よ漕げ

124 初春に 心の畑を 培ひて 良き実を結ぶ 種を蒔かなむ(昭和五年正月に)

125 示されし 道にすすまむ ともすれば
   怠りがちの 我に鞭うち

126 振(ふり)むかで 進め我が駒 暮れぬ間に
追ひつきゆかむ 峯行く人に

127 とどろける 浪(なみ)の音ききつ 三歳(みとせ)ゐし
   さみしきコタン 今なつかしも

128 端然と ちからづよくぞ 語られし 君今はゐず ゐろり空しも
(逝きし中里徳太郎氏)

129 墓に来て 友になにをか 語りなむ 言の葉もなき 秋の夕ぐれ
   (逝きし違星北斗氏)

130 ただ一人 父のかたみと 残されし
君また逝きぬ うら若くして
*逝きし中里篤治氏

131 ウタリの為 一人気をもむ 父見れば わが胸いたく 思ひせまれる

132. ウタリをば 愛するあまり 悪しきをも
目にせぬ父の 愛のいたまし
訳者注:「父」は八重子の養父ジョン・バチェラー(1854~1944 )、英国人牧師、
アイヌに対する布教、保護活動に尽力した。

133 悪しきをば 悪しきとなして 叱るほど
愛してくれよ ウタリの父さま

134 父の恩 受けしはウタリのみならず
和人(シサム)も多く 救はれしかな

135 老いゆくも 忘れつとむる 父見ては
   真に思へり 我がふがいなさ

136 規律よき 母見ならへど 及びなき
われ悲しみて われにむちうつ

137 曙(あけぼの)に 聖書を手にする 母見ては
切にせめらる 我が弱き心

138 おのが死を 思はで父は 案じ居たり 死しての後(のち)の 家と子らとを

139 父逝きし のちに悪人 はびこりて
数多(あまた)の馬も 財も失せにし

140 逝(ゆき)し父を まだ帰らずやと 思いつつ 家中さがしつ 幼なかりし日

141 霊にだに 会ひたきものと 暗闇に 目を大きくも 開けて見しかな

142 ゆめのうちに 父は帰りし 喜びて 父よと呼べば 夢は覚めにし

143 此(この)たびは 帰らざれ父と いふうちに
夢はさめたり 苦しかりし夜

*父(向井富蔵)と娘(八重子)の間に何があったか、これだけではわからない。、
8歳の時 親の許可なく洗礼を受けたときの思い出(父に隠していた)との
推定もあるが、「父は反対しなかった」とも言われている。

144 父逝きて のこせる家を 父のごと
我等は愛し 住み居りたりしが

145 われ等みな 父の形見の 家として どんなにどんなに 懐しかりし

146 悪人が 父の残せる 家破壊(こは)し
とく去りゆけと せまりたりし日

147 かくまでも 相親しみし あの土地を 去らねばならぬ 悲しかりし日

148 友だちの 父見るたびに 思ひたり 我にもすぐれし 父ありし日を

149 父のなき 弟見ては 人知れず
心の中(うち)に 我は泣きしか

150 どうぞして 死せる父をば 又いかす
能(ちから)をほしと 願ひし子なり

151 キリストの 教を聞きて 永遠(とこしへ)の
命ありと聞きし その日の喜(よろこび)

152 神よ神よ 父を守りて 幸(さひはひ)し
永遠(とは)の命を 与えませよな

153 父のため 神にいのりし これぞこの
わが初めての 祈(いのり)なりしか

154 我が胸に 度々うかぶ 良き絵あり 父と弟の 道行く姿

155 亡き父の おもひで多し 良き事の 数多ありけり かぞへがたきほど

156 父よ父よ 神の御園(みその)に よろこびて
永遠(とは)の命を 受けてあれかし

157 有珠湾に まれに訪ひくる 雁の群 足も濡らさで 去るぞ悲しき
訳1:Sovaĝanseroj, / niaj maloftaj gastoj, / kial foriĝas /
vi, sen tuŝo al akvo / mara de Usu-golfo. /
訳2:Ve, mi bedaŭras, / ke vi, sovaĝanseroj, / maloftaj gastoj, /
foriĝas tuj sen tuŝi / marakvon Usu-golfan. /

158 幼(おさな)ごろ 恐(おそろ)しかりし 有珠嶽(うすだけ)に
   今はこよなき 親しみぞもつ

159 春ごとに 村に訪(と)ひ来し 閑古鳥(かっこどり)
家の近くの 山に鳴きしか

160 幼くて こよなき友と したしみし あの湧き水ぞ 今も恋しき

161 ごとごとと 夏は冷たく 冬ぬるく
湧きて流れし 愛(いと)しき小川

162 ごとごとと ちひさき泉 いまもなほ
埋(うづも)れつつも 湧きてあるらむ

163 目に触(ふれ)ぬ 神も住まはむ 有珠コタン
今も昔も 何時の世までも

164 有珠山に のぼりながむる 噴火湾
岸辺(きしべ)にたてる 駒ヶ岳かな

165 海もよし 山もうつくし 人もよし ほんに住みよき 有珠コタンかな

(注)有珠コタン:有珠村、現在の伊達市有珠。コタンは村、集落(アイヌ語)

166 野に咲ける 数かぎりなき 草花の 心とはまし 野の蜜蜂に

167 砂原に 赤く咲きたる ハマナスの 花にも似たる ウタリが娘

168 閑古(かっこ)鳥 友にはぐれて なきてあるか
あはれ宿なき さびしき小鳥

169 雨の夕べ あはれにきこゆ 閑古(かっこ)鳥
悲しきことの 何のあるらむ

170 ならばやな おもふは夏は 渡り鳥 木の葉のかげに 歌ひ暮らさむ

171 有珠コタン 岩に腰かけ 見てあれば 足にたはむる 愛らし小魚

172 有珠コタン 岩に腰かけ 聞(きき)てあれば 岩と岩との 息ぞ聞(きこ)ゆる
Aŭdas mi sonon de spirado de rokoj,
sur kiuj sidas mi en viva naturo de la vilaĝo Usu.
(註)コタンはアイヌ語で「部落、集落、村」、vilaĝo と しました。
前回 171 ではアイヌ語のまま kotano と書いてしまったが説明が必要でした。

173 朝ごとに お早う言ひに 小山より
通ふ子烏(こがらす) 可愛ゆくぞ思ふ

174 有珠湾に 小舟(をぶね)うかべて 少女子(をとめご)ら
自由に漕ぐ海 鏡の国の如(やう)


175 有珠コタン 彼方此方(かなたこなた)に チャシぞある
古きウタリの 後を語りて

176 ポロノット タンネシレトや レプンモシリ
神の園生(そのふ)も かくやあるらむ
*ポロノット:大岬、タンネシレト:長崎、レプンモシリ:沖の島
アイヌ語をそのまま詠み込んだもの

177 くれなゐの 色濃き紅葉 眺め居し わが心また 紅くさえけり

178 やがて落ちむ 紅葉をかくも うつくしく
装ひ給へる 神の御能(みちから)

179 紅の 色さゆる紅葉 ひと葉ふた葉 ちり行く様ぞ 涙ぐましき

180 さえまさる 紅葉の色も うすらぎて 落ち散る様ぞ 涙なりける

181 時雨(しぐれ)ふりて 翼ぬらせる 粟(あは)すずめ
さぞ寒からむ この秋の夜を

182 しづが屋の 軒端も無くば 小雀の 今宵の宿は 何処なるらむ

183 小(を)山田の 賎(しづ)が伏屋(ふせや)ぞ 小雀の
暖(あたたか)きお宿 暖きお家

184 雪解(ゆきげ)する 丘のをちこち けなげにも
黄なる花さく 春は浅きに

184 雪解する 丘のをちこち けなげにも 黄なる花さく 春は浅きに

185 あの可愛(かあ)い 清けき笑(えみ)は あとも無く
ただ苦しげな 面(おも)ぞありける

186 あゝ苦し 此の悲しみは 誰知らう スミ子を愛でる 叔母ならずては

187 天つ神 スミ子を迎へ はぐくみて
御膝(みひざ)のもとに 幸(さち)あらしめよ
(註)作者が可愛がっていた姪のスミ子、3歳で病死。
Dio ĉiela! Prenu mian nevinon Sumikon, karan.
Apud viaj genuoj protektu ŝin feliĉa!

188 スミ子さん さらばおさらば おとなしく 神の御園に 楽しくあれよ

註:可愛がっていた姪スミ子、3歳で病死。

189 如何なれば かくもめでにし スミ子をば
三歳(みつ)の生命(いのち)に あはれ死なせし

190 めぐし子の 汝(なれ)がゑまひを 今も猶(なほ)
忘れ得ずして 涙ながしぬ

191 ひたぶるに 我を慕いて むづかれる 幼き汝(なれ)を 夢にもみしが
Ha, mi sonĝis vin, kiu ja rektanime min sopiris kaj
sekvis, plendploris al mi. Ja, naiva vi estis!

192 ねがはくば 清きゑまひの 瞳もて 神のみもとに 安らけくあれ

193 夕空に ひびきわたれる 鐘の音に つどへる子等の 妙(たへ)なるみ歌

194 をしへ子の イエス讃(たた)ふる 御歌(みうた)きき
涙ぐましき クリスマスイーブ

195 牧師なき チャーチ古びて うら寂し イエス涙し みそなはすらむ

196 教会の 鐘の音聞きて よろこびつ 集いし子等を しのびて寂しも

197 只ひとつ ウタリを生かす 御教え(みおしへ)も
   今は傳(つた)ふる 人もなきかな

198 誰にても 遣(つか)はし給へと 祈りつつ
心迫りて 涙あふるる

*これで「平取にてのクリスマス」の6句は終わる。以前の試訳に合わせて
「子等」、「をしへ子」は geknaboj とした。

199 いにしへの 聖徒の歴史 傳へつつ 大聖堂は 尊くも立つ

200 カンタベリィ 永住民の ほこりにて
永久(とは)に伝(つた)ふる 聖史なるらむ

*カンタベリィ(Canterbury)は発音で表現した

201 大いなる 都市を我みる 聖パウロ
大聖堂の いただきにして

202 円形に 世界のひとを 満たさんと 大聖堂は 内広らなる
Ronde plenigi/la halon per tutmondaj/homoj(,) ĉi tie/
ja vastegas interno/ de la granda kapelo/

203 仰ぐさへ おそれおほかる 聖堂の
礼拝式に つらなれるかな

204 此園(このその)の ティーパーティーに 招かれし
わが幸(さいわい)を しみじみおもふ

205 美しき あまたの人は 花のごと 園生につどひ 笑みつつ行きかふ

註:この部分(199 ~223 )は英国旅行中のもの。

206 いみじくも 妙なる楽の 音につれて 舞ふがごとくに 行きかふ人かな

註 英国旅行中の歌(パーティー?)

207 嬉しくも アーチビショップ み自(みづか)ら
絵の説明を 我にし給ふ
(大監督のデナーに つらなりて)

208 我が両手 にぎりて祝福 たまひけり
尊きビショップ 恵のビショップ

209 かうむりし 恵(めぐみ)はふかし 我が魂(たま)に
永久(とは)にきざまん 身は果(は)つるとも

210 ハイドパアク スパロウの群(むれ) 嬉々として
さへづる声に 我もうれしき

211 現(うつつ)にて 我は入るかな いにしへの 城のかたみの ロンドン塔に

212 名匠の 絵かとも思ふ タワブリッヂ
くる汽船(ふね)ごとに 開きては閉づ

213 いかめしき 兵士は所々に 直立し 古き城跡 守り居るかな

214 おのづから 人を仰がす ネルソン塔
さ霧の中に 勇ましく見ゆ

215 ことごとく ビードロ製の 遊戯場
クリスタルパレスは 麗(うるは)しきかな

216 あまりにも 物質文明 すすみゐる この大都市に 心をののく

註:1909年英国旅行のロンドンにて

217 ケンブリッヂ 緑も深き園にたつ
大学校は なつかしきかな

218 甘(うま)しとて とりてたまへり 校庭の 桑に実れる 大粒の実を

註 英国旅行中ケンブリッヂのマカリスタ博士に案内された折の思いで。

219 ケンブリッヂの 博士の家に 過(すご)したる
一週間こそ 楽しかりしか

220 大学と マカリスタ博士と 桑の實は
永久(とは)に忘れぬ なつかしの思出

221 オックスフォード 大学校の 図書館(ライブラリー)
世界の書籍 皆ありといふ

222 もだしつつ 男女学生 ともどもに 学びいそしむ さまのゆかしさ

223 大学の 校舎はふるく おくゆかし
昔がたりに ある街に似て

224 裾燃ゆる アツシを纏ひ ウタリをば 教へたまひし 君慕はしも

註:アイヌの祖神アイヌラックルは、顔の真っ赤な人で、その着る厚司
(オヒョウニレの樹皮で織った着物)は、裾に火が燃えていたと伝えられる
(これはシャーマンの象徴)。

244 のはじめの 「神住まふ」 の「神」は
アイヌ神話に出る神々(複数)か?
そのあとの「君すましめよ」 の「君」は
ユーカラカムイ(単数)のように見えるが?

225 輝やける オイナカムイの御(み)面影
仰ぎ得ざりし トレスしのばる

*トレスは Tres とした。

226 つつましく 君に侍(はべ)りて もの語る
トレスの姿 いかにさえしか
の最後の 「さえしか」について。
これは古語(文語)の下二段活用動詞「さゆ(冴ゆ?)」の変化形
でしょうか。古語辞典がないので 短歌、俳句などをご存知の方に
お願いします。ここを どう理解しますか。

226 つつましく 君に侍(はべ)りて もの語る
トレスの姿 いかにさえしか
#君:オイナカムイ、アイヌラックル
#トレス:上記の 若い妻

227 ウセモシリ ポクナモシリを 経(へ)めぐりて
   君ことごとく 征服セリと
   (ウセモシリ:ただの国、この地上の国)
    (ポクナモシリ:地底の国、冥府)
   (君:人間の租神オイナカムイ、別名アイヌラックルをさす)

228 の 「君の声のみ 尊(たふと)くきこゆ」 は
アンロルン カムイ(ローマ字綴りは?) に聞こえるのか、
一般のアイヌが 聞いているのか?
anrorun kamuy

228 アンロルン カムイの目には 見えざれど
君の声のみ 尊(たふと)くきこゆ

229 君あれば すがた見えねど み光が 雲間にまぶしく 尊く見ゆと

230 吾(わ)が会ひし 軍(いくさ)のさまを 詠(うた)ひつつ
なせる詩舞(うたまひ) みごとなりけむ

*li(原文:吾が)は アイヌラックル、235も同じ。

231 君舞へば 手下に使ふ 雲舞へり 詩舞(うたまひ)につれ 拍子とりとり

232 うたひ上ぐる 君の詩声(うたごえ) 天に登り 四方に響き 渡れりといふ

註 人間の祖神オイナカムイを讃える歌

233 君はしも 人のねうちを つけし人
人の世の限(かぎり) 忘れまじ人
*アイヌラックルは・・・・(原書説明、省略)

234 神と人 かねたる人と 人傳ふ げにさもあらむ 君の尊さ

235 裾もゆる アツシの姿 いさましく
輝きけりと 傳(つた)へ聞(きこ)ゆる

236 オイナ神に 優(まさ)れる神は あらずとし ウタリは傳(つた)ふ ウタリの末に

* オイナ神=オイナカムイ=アイヌラックル:Oina.
homo-similulo, do ainoj komprenas tiun duone-dio, duone homo.
* ウタリ=samgentano: 「アイヌ」と したことも多い。

237 オイナ神 君は誰なる ウタリには 救主(すくいぬし)とも 思ひてあるを

(註)オイナ神:オイナカムイ、人間の祖神

238 オイナカムイ アイヌラックル よく聞かれよ
ウタリの数は 少(すくな)くなれり

239 オイナカムイ 救主(すくいぬし)なれば ウタリをば
救はせ給へ 奇(く)しき能(ちから)に

240 人目には 見えねど君は 今もなほ
奇しき力の 豊(ゆた)にあるらむ

241 居ながらに アンロルンカムイの 娘をば
癒(いや)せし君の 奇(く)しき御力(みちから)

242 傅へ聞く トミサンペチの シヌタプカ カムイイワキヒ 今何処(いづこ)なる

註 アイヌ詞曲の英雄ユーカラカムイの郷土、トミサンペチはその地の川の名、
シヌタプカはその川の岸にあったといはれる郷名。
カムイ=神、ここでは美称。イワキヒ=その住所
尊い城趾は今何処ぞ の意。

243 空を突く トミサンペチのシヌタプカ
ユカラカムイの 御城なるかな

244 のはじめの 「神住まふ」 の「神」は
アイヌ神話に出る神々(複数)か?
そのあとの「君すましめよ」 の「君」は
ユーカラカムイ(単数)のように見えるが?

244 神住まふ トミサンペチのシヌタプカ
君すましめよ 長(とこし)へ までに

245 雲を越え 高く聳ゆる シヌタプカ 城は黄金の 圍障(かこひ)の中に

246 神よりの 尊き宝 城の奥に
奇しき光に 輝きしとぞ

247 カニスンク カムイヤクラは 代々の
君し座(いま)して 見しか戦(いくさ)を

248 君いまだ をさなきころに 悪者等
きみが命を ねらひたりとぞ

249 君が世は 絶えず戦 なりしと聞く
ウタリの骨鳴り 胸さくばかり

250 をさなくは 君ありしかど 勇(いさま)しく
滅(ほろぼ)しましつ あまたの敵を

註:アイヌ詞曲の英雄ユーカラカムイをたたえる歌。

251 ヤウングル ポンヤウンベの 勢(いきほひ)に
悪者どもも 舌をまきしと

*この歌の下にある註によると ヤウングル について
> 「本島人」なる「ポイヤウンベ」の義
とあり 歌の中の「ポンヤウンベ」と違っているが 同じものとみなす。
*この歌のもとになっている英雄詩曲(ユーカラ)は(北海道)本島人と
海の向こうから来るレプンクル(沖の人:外来異民族)との戦いを
描いたもの、アイヌから見れば異民族は侵入者だから invadantoj とした。
この異民族は7~12世紀の間北海道日本海岸、オホーツク海岸のあちこちに
遺跡を残したオホーツク文化人か、との説がある。

252 キキリパス   ニイタイクンネ よせ来る
  虫の湧くように  林のように
  敵にぞ勝ちし 君一人(ひとり)にて

253 はらわたを 引きずりながら 敵国に
君攻め入りて ほろぼせしとぞ

254 君は實(げ)に ますら丈夫(たけを)ぞ 千代かけて
讃(たた)へうたはむ うたひたたへむ

255 ウタリの子に 君流せし血 生きてあり などか恐れむ クンネチカッポ等

(註)クンネチカッポ=黒鳥、多数群がりて肉を食むといふ妖鳥。

256 在りし世に 勇ましかりし 君は今 何処のはてに いますらむ今
(「君」は 英雄詞曲の英雄 ユーカラカムイ)

257 神をかねし 君は必ず 生きています 高き心に 深き心に

註 これもユーカラカムイを讃える歌

258 奥深く 極めさがさむ わが君を
よしいと深く 掘り返しても

259 勇ましく 戦ひましし 君が妹(いも)
つれ帰りませ サポのみもとに

260 イレスサポ 君が御城(みしろ)を 守り居て
待ちわびつらむ 君が帰りを

261 古(いにしへ)の ユーカラカムイを 育てたる サポ君のごとき サポ君ほしい

註:少年英雄を育てた養育上の姉(イレスサポ)のこと

262 サポ君の 巫(ヌプル)の力 今もなお
   ほしきものかな ウタリのサポに

(サポ:姉、詞曲では少年英雄を育てた
イレスサポ(養育上の姉)を指す)


263 イレスサポ 居ながら何処(どこ)の 出来ごとも
知りて傳へつ 弟君に
*義姉は いみじき巫女にて……

*イレスサポについての注釈
* Franjo Sapo estis mirinda s^amanino, .....

264 イレスサポ 己がたふとき 力をば
ふかく隠しつ ゆかしき思(おもひ)

265 シノヌプル サポを仰げば おのづから
  さがるをおぼゆ わがこの頭(つむり)

(Rimarko)
(*1): "Utari" estas aina vorto signifanta samfamilianon, parenconkaj samgentanon. La origina nomo de la gento estas "Ajnu"(esperanteAino), sed ĝin en ĉi tiu artikolo la verkistino(poetino) uzis malofte nuren specialaj okazoj.